ゆく年くる年

昨年は、「初めてのことをたくさんする」という目標のもと、様々なことに手を出してきました。18切符によるひとり旅(京都編/中国地方周遊編)、御朱印集めを始めたり、美術館でのアルバイトを始めたり、ちらっとボイストレーニングに行ってみたり、モスクを見…

黄と赤

電車に座った瞬間に、どっと重力が倍になった気がした。露子は、一番端の席に座り込むと、すぐに仕切りに寄りかかり、頭のスイッチを切った。幸い、始発の駅なので並んでいれば座って帰れる。露子は、去年から勤めている出版社で事務の仕事をしている。いわ…

近況まとめ。

特筆するような出来事も起こらないまま、粛々と週に一度の用事をこなしてある程度人間らしく日々を過ごしていた。新しいアルバイトを始め、余暇というものを抹消する結果となったが、将来につながるアルバイトができているというだけでもしあわせに思うべき…

ちょっと京都に行ってみた

一人旅というのに、昔から憧れていた。小学生の頃に「黒ねこサンゴロウ」シリーズの「旅のはじまり」という本を読んでからだったと思う。一人でちょっとどきどきしながら電車に乗って、全然知らないところにぽおんと放り出されて、初めて会う人、初めて見る…

かさぶた

保健の教科書に、「精神が落ち込んだ時は、今のその感情ありのままを書き出してみると落ち着く」という記述があったので、かつてそうしてみたことがあった。しかしその結果、私の心は静まることはなく、さらなる絶望と怒りを生んだだけに過ぎなかった。自分…

川越探索 蔵造りの街並み編

川越へ行こう。 冬休みも終盤に差し掛かり、ふとそう思い立った。かねてより噂には聞いていて、ずっと行きたいと思っていた町だ。私の家(神奈川県)から川越までは電車で二時間ほどかかるが、東京まで出られる定期券を持っていると、不思議とどこへでも行け…

MOCHA(3)

うしろから、混乱して立ち尽くすわたしを呼ぶ声がした。 「モカ…。モカだよね?」 おじいさんより若い声。振り向くと、そこにはアルバイトの男の子がびっくりした顔で突っ立っていた。 「まさかほんとに…戻ってくるなんて」 戻ってくるに決まっているでしょ…

MOCHA (2)

そうして、おじいさんが私を拾ってから二度目の冬の日、わたしは死んだ。煙草の煙を吸いすぎて、体がおかしくなったらしい。わたしの最期の日も、おじいさんは仕事だった。わたしは店の奥の部屋で丸くなっていた。おじいさんが私のために用意したやわらかい…

MOCHA (1)

「君、ひとりなの?」 ある雨の日、路地裏のごみ箱に腰かけていた私にそう声をかけてきたのは、白髪のおじいさんだった。茶色のコートを着ていた。手に紙袋を抱えていて、黒い傘をさしていた。暖炉がよく似合いそうな、優しい顔のおじいさん。その人がそこに…

戦場のピアニスト

地上波のバラエティ番組の類は、そのCMの多さやくだらなさ、声のうるささやなんとなく漂うヤラセの雰囲気等々が気に入らず、どうしても映画に逃げてしまう性癖があり、今夜もそれは相変わらずで、祖父から借りた映画を見た。 「戦場のピアニスト」。 ナチス…

はじめまして

初めてブログを書きます。たぶん三か月くらいたったら、うげええ黒歴史だ!って思うようになるんだろう。なぜ急にこんなことをしようと思ったのか自分でもよくわからないまま始めてしまったが、何より「ブログ」という響きにひかれたこと、もっともらしい理…